【 解 説 】 |
ここでご紹介したのはヒロに伝わる伝説ですが、マーウイが島を釣ったという伝説は各地に残っています。マーウイが島を釣った経緯や、どの島がそのときの島かという細部は、土地によって言い伝えが異なっています。例えば、マーウイは大きな魚を釣ろうとしていたのだけれども、その魚が島に変身して動かなくなった、という話もありますし、中には、まだハヴァイイ諸島がなかったころ、マーウイは大海原で海底を釣り上げようとしたのですが、全体を引き上げることはできず、代わりに海底の破片を釣り上げた、それが現在のハヴァイイ諸島であるという、もう一つの島々の形成神話も残されています。
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モクオラはとても小さな島で、今日では島のふちにぐるりとココヤシが植えられ、市民の憩いの場所になっています。モクオラは、バニヤン・ドライブ(ヒロに来る観光客のほとんどが滞在するエリア)から程近く、歩行者専用の短い橋を渡って簡単に行くことができます。モクオラには、マカウアマーウイ(Makaumaui)、「マーウイの釣り針」という意味の地名も残っています。
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この島の名前は「癒しの島」という意味ですが、それはここに古代の病院があったからです。病院とは言っても、その治療法はかなり原始的で、島のそばにある海中の涌き水や、そばの海中にある岩の周りを泳ぐことが病に効くとされていました。
また、モクオラは、古代の避難所、プウホヌア(pu'uhonua)でもありました。プウホヌアというのは、何人たりとも、そこへ逃げ込めば危害を受けなくてすむという、特別な施設です。
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昔のハヴァイイでは、厳格なカプ(kapu)制度が敷かれていました(1819年に廃止)。カプというのは「タブー」に当たるハヴァイイ語で、生活のさまざまな側面を規制していた規則のことです。例えば、男女が同席して物を食べてはいけない、女性は豚肉、ココナッツ、ほとんどの種類のバナナを食べてはいけないなど、たくさんのカプがありましたが、それ以外にも、王族は好きなときに、好きなようにカプを定めることができました。カプを破った者は厳罰に処せられ、その多くは死刑でした。
しかし、カプを破った者が死刑を逃れる方法が、ただ一つだけありました。それは、捕まる前に「プウホヌア」に逃げ込むことです。プウホヌアへ入り、そこで僧侶の祈祷を受ければ、罪が許され、何事もなかったように家へ帰って、普通の生活を送ることができたのでした。
また、戦争のときには、負けた方は皆殺しになるのが常でしたが、非戦闘員や敗残兵は、プウホヌアへ逃れれば殺されずにすみました。プウホヌアに逃げ込んだ者には、どんなに強い権力を持った王族でさえ、手を出すことができなかったのです。
このようなプウホヌアは各地にありましたが、もちろん、逃げ込むのは容易ではありませんでした。例えば、プウホヌアの周りが王の見張りに囲まれていたり、たどりつくには危険な海域を泳いでいく以外になかったりしました。
プウホヌアは、キリスト教宣教師と、その影響を受けたハヴァイイ王朝の実力者によって破壊されたり、うち捨てられたりしたため、現在、もとの姿を留めているところはありません。モクオラには、往時を偲ばせるものは何も残されていません。復元されたプウホヌアとしては、ハヴァイイ島、コナ(Kona)にある、プウホヌア・オ・ホーナウナウ(Pu'uhonua
o Honaunau)国立歴史公園が有名です。
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